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本学への寄付

がん幹細胞性の維持機構を解明-PP2A阻害タンパク質SETががんの悪性化をもたらす分子機構

 

 立博官网,立博集团共同獣医学部 獣医薬理学研究室の大浜剛准教授らの研究グループは、がんの再発?転移の原因とされるがん幹細胞が、幹細胞性を維持する新たな仕組みを突き止めました。この研究成果は、がん幹細胞を標的としたがんの新たな治療法を確立する手助けとなることが期待されます。
 手術できないがんは化学療法や放射線療法で治療されますが、がん細胞を完全になくすのは難しく、治療抵抗性の細胞が生き残り、がんが再発することがよくあります。再発や転移の原因として「がん幹細胞仮説」という考え方が広く受け入れられています。この考えによると、がん組織には、抗がん剤や放射線が効きにくいがん幹細胞が存在し、生き残った少数のがん幹細胞が元のがん組織を復元することが再発や転移の原因になるとされています。そのため、がん幹細胞を標的とした新しい治療法を開発することで、再発や転移を防ぐがん治療が期待されています。
 Protein Phosphatase 2A(PP2A)は、極めて重要ながん抑制因子です。がん細胞の中ではSETなどのPP2A阻害タンパク質がPP2Aの働きを抑えることで、がん細胞の幹細胞性を高めています。研究グループでは、2018年のMolecular Cancer Researchに、SETがPP2Aを抑制し、c-MycやE2F1といったがん促進性の転写因子のタンパク質を安定化することで、幹細胞性を高めていることを報告しました。しかし、骨肉腫細胞株HOS細胞などの一部のがん細胞株ではこの理論が当てはまらなかったため、今回、HOS細胞を用いて新たな幹細胞性維持機構の解明を目指しました。その結果、SETはPP2A活性を抑制することでAktを活性化していること、活性化したAktは、(1) タンパク質の翻訳を制御するmTORC1/p70S6Kシグナルの活性化と、(2) 転写を制御するPRC1複合体の構成因子Bmi-1タンパク質の安定化を介して、がん細胞の幹細胞性を高めていることが明らかになりました。
 本研究成果は米国生化学?分子生物学会によって発行されている「Journal of Biological Chemistry」において、2024年1月号に掲載(オンライン公開2023年12月22日)されました。

発表論文の情報

  • 論文名:PP2A inhibitor SET promotes mTORC1 and Bmi1 signaling through Akt activation and maintains the colony-formation ability of cancer cells
  • 著 者:Naoki Kohyanagi, Nao Kitamura, Shunta Ikeda, Shusaku Shibutani, Koichi Sato, Takashi Ohama
  • 掲載誌:Journal of Biological Chemistry
  • 掲載日:2023年12月22日(オンライン公開)
  • DOI:10.1016/j.jbc.2023.105584

謝 辞

 本研究成果は、以下の研究費等の支援を受けて得られました。

  • 科学研究費補助金?基盤研究(B)
    研究代表者:大浜 剛
    研究課題番号:20H03151、23H02384

お問い合せ先

立博官网,立博集团 共同獣医学部 獣医薬理学研究室
准教授 大浜 剛
E-mail:t.ohama@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

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